課長が私を好きなんて!


6 約束

 坂本くんから何度かメールがきている。
 最初に会った日からずいぶん日にちが経つけど、あまり私が重いと思わないように、二、三日空けて短いメールがくる。
 それを見ると……やっぱり悪い人じゃないんだけどなあという気持ちになる。でも今の私の頭の中は榎さん一色だ。
 長く気を持たせたままにするのは申し訳ないから、私はある日思い切って電話をかけた。
「もしもし、中田さん?」
 彼が家にいるのかとかわからなかったけど、すぐ電話に出てくれたから忙しい訳ではないみたいだ。
「こんばんは、突然ごめんね」
「いいよ。どうしたの?」
 次の約束をどうしようかっていう話を期待されてるんだろうな……と思うと、本当に心が苦しい。
 でも、ここで曖昧な態度はいけないよね。
「あのね、その……いろいろ誘ってもらってるのに、曖昧な返事しかできなくて……ごめん」
 私の声のトーンで、何となく坂本くんもその先を察してくれているようだ。
「何となくね、わかってた。最初に会った日も、時々別のこと考えてる感じだったし」
 とくにショックを受けた様子も見せず、彼はすんなりそう答えた。
「ごめんなさい!」
 携帯を握ったままぺこんと頭を下げる。上の空だったのも、やっぱりバレていたのね。
「好きな人いるの?」
「本当はね、坂本くんと会う直前までは誰もいなかったの。でも、急に意識しちゃう人ができてしまって……ちゃんと自分の気持ちに気付くまで時間がかかって……」
 どんな言い訳をしたって、坂本くんが納得できるわけない。
 でも、坂本くんは私を責めたりしなかった。
「そうかー。君に好かれてる人が羨ましいな……。俺って結局、嫌われもしないけど好かれもしないっていうパターンが多いんだよ。これってキャラクターだから仕方ないのかな」

サンプルEND
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