Side 手島 美月 3 もうごまかせない・・・。 叶わない思いだって知ってるのに、どうにもならないほど、私はお兄ちゃんが好きだ。 私がとめどなく涙を流すのを見て、武藤くんの表情も悲しげなものに変わった。 「馬鹿やろう・・・。何で・・・俺にしないんだよ。何で・・・俺じゃ駄目なんだよ・・・!」 そう言って、武藤くんの目にも涙が溢れていた。 淡々と緩い映画が流れる中、私達はどうにもならない心の葛藤に苦しんで・・・泣いた。 結局、武藤くんとは友達に戻るっていうのも無理で・・・彼は、二度と私には会いたくないと言った。 「俺も・・・そこまで人間できてないから。兄貴以外に好きな奴が現れるといいな・・・。まあ・・・俺で駄目なんだから、それも無理か」 最後に、少しだけ私を楽にさせようと・・・彼はまだ気を使っていた。 「・・・さよなら。ありがとうね・・・本当に・・・たくさん・・・ありがとう」 私は無理に笑顔を作って・・・精一杯彼にお礼を言って・・・別れた。 私の青春のほとんどを一緒に過ごした、大好きな・・・貴重な・・・宝物。 そんな存在が・・・指の隙間から砂が落ちるみたいに消えていった。 武藤くん・・・司くん・・・大好きだった。 あなたと将来をずっと生きていけたら・・・きっと、最高に幸せだったと思う。 でも、あなたはストレート過ぎたし、私は頑な過ぎた。 もうちょっと私が適当に異性に対する心をコントロールできる能力を持っていて、武藤くんがもう少し鈍感なら・・・私達はうまくいったのかもしれない。 どうにもならないこの・・・消せない感情。 今・・・会いたいのは・・・陽くん。 彼の携帯に”今から行くね”と打って、私は走り出した。 気持ちがせいてしまって・・・私は、ひたすらお兄ちゃんの住むアパートを目指して走った。 電車に乗ればいいのに・・・それすらまどろっこしくて・・・走った。 前に進むのが好きな武藤くんの気持ちが少し分かったような気がする。 こうやって、一歩でも前に進むのって・・・気持ちいいね。 何かに向かって・・・突進するのって、潔いね。 例え先が崖になっていても、後悔しないように全力で走る。 私も・・・そういう人生を歩みたい。 もう・・・自分のボンヤリした心で、誰かを傷つけるのは嫌・・・。 心の奥底にしまってあった本心を、お兄ちゃんに告げよう。 どこまでも走り続けているうちに、さすがに息も上がって、私は道路の真ん中で一回立ち止まってしまった。 信号が青から赤に変わる途中だったのに・・・。 次の瞬間、左側から強烈なライトで照らされた。 「!」 ブレーキの音・・・クラクションの音・・・。 私の体に、鈍い衝撃が走った。 あと少しで兄の住むアパート・・・という場所だった。 INDEX ☆ NEXT |
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