Smile! 新生活編2


13−4 暖かい夜とジェラシー SIDE菜恵 【R18】

 聡彦の使っているアバタ―の名前は知っている。
 私のジェニーもかなり適当だけど、彼の「ポルコ」も相当だと思う。好きなアニメから名前をとるという意味では聡彦の方が上か……?
 とにかく、彼のページを見てみると、本当に適当に放置されていた。
 ブログなんて2つくらい書いて放置してある。
 友達も特にいないみたいだし……本当にまるっきり興味が無いのが分かった。だから私は特に意識もせず足跡を消さずにいた。(訪問すると自分の“足跡”が残り、それは任意で消すことが出来る)
 この甘い考えが、後でひどい誤解を生むことになるとも知らず……。

 仕事が忙しいと言って遅くなる聡彦だけど、それなりに気は使っているみたいで。
「菜恵……もう寝たか?」
 寝室に顔を出してそっとつぶやく。
 私は寝たふりをしてやろうかとも思うんだけど、何だか可愛そうになって返事をしてしまう。
「ううん、起きてるよ」
「そっか、アイス買ってきたんだよ……和彦が寝てる間に食べよう」
 こんな可愛い事する人だっけ?
 ふて寝を決め込んでいた私だけど、こうやって優しくされると単純にも気持ちが戻ってしまう。いつの間にやら聡彦を好きな私の心は病的なほど重症になっている。
「私、キャラメルの入ったのがいい」
「菜恵はおこちゃまな味が好きだからな」
「いいでしょ、別に!」
 しっかり用意されているキャラメル味のアイスを見て、正直かなり感激。
 聡彦はラムレーズンという何とも大人なチョイスだ。まぁ、抹茶味も好きなのを知っているから、彼はアイスといえども渋めが好きなのだ。
「……美味しい」
 一口食べて、キャラメルの甘さがトロリと舌の上で溶ける感覚は何とも言えず、思わず頬を押さえて和彦がやるみたいに「おいちい」のポーズをしてしまう。
「喜んでもらえて何より……」
 そう言って聡彦も自分のアイスをパクパクと食べている。
 最近私がちょっと拗ねぎみなのが分かってるんだろうか……。
 夫婦になってしばらく経っているし、ややマンネリな関係になってるのかなって心配したけど。(私は全くマンネリとか……思った事ないけど)
 でも、アイスを食べ終わる頃に聡彦がキスを求めてきた時、『ああ、私はまだ女として必要とされてる』って感じられて嬉しかった。
 甘いキャラメルとほんのりラム酒の味が混じった不思議なキス。
 どこまでも甘く……どこまでもほんのり酔わせながら、聡彦は私の体をゆっくりと焦らしてゆく。
「あぁ……久しぶりだから、すぐ欲しくなっちゃう」
 愛撫が長いのは嬉しいけど、聡彦を直接感じたい気持ちが強まってきた。
 懇願するように聡彦を見つめると、とたんに彼も我慢の限界がきたように服を全て脱いで私の中へ侵入してきた。
「あ、聡彦……」
 グンッと中に入ってきた彼の熱いものは、覚えていたものよりずっと刺激的で一瞬目の前がチカッとしてしまったぐらいだ。
「どうした?」
「ううん……すごく気持ちいいの。続けて」
 この合図で、彼はリズミカルに腰を動かし続け……やがて体が完全に溶け合ったような感覚で絶頂を迎えた。
 久しぶりのエッチ……何だか妙に嬉しい。
「ねえ聡彦……私を世界一好き?」
 こんな甘えた事を聞けるのもこの瞬間だからだ。普段はとても恥ずかしくて聞けない。
「当たり前だろう……お前がいなかったら、俺は生きてない」
「……」
 何を心配していたんだろう。
 聡彦がモテたからといって私の価値が下がるわけじゃない。嫉妬は人間の冷静な判断を狂わせるとんでもない悪魔だ。
 この悪魔のせいで私たちは何度も苦しめられてきた。
 今、私が聡彦を信じなくて夫婦が続けられるはずがないね……。
 体を重ねた事で気持ちが安定し、私は生田さんへの無意味なライバル心を可能な限り小さくしようと心に決めた。

 ところが……。

 私がせっかく嫉妬から立ち直ったというのに、数日後……聡彦の逆鱗に触れる事が起きた。
「菜恵、このムーンライトって奴は何なんだ?ずいぶん親しくしてるみたいだな」
「あっ!」
 聡彦は全く見ていないだろうと思っていた仮想空間での話し相手のムーンライトさん。毎晩のように互いのページを訪問しあっているのが足跡を見れば分かってしまう。
 特別やましい事はしていないのに私の中では聡彦のハンパないジェラシーが燃え盛ってしまったのを悟り……何も言葉が出てこなくなってしまった。

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